マロリー・ワイス症候群とは?

嘔吐をした際に、胃と食道の境目に負担がかかり、粘膜が裂傷することで出血する病気です。マロリー・ワイス症候群は、頻回の嘔吐反射の後、突然吐血するのが特徴です。ほとんどの場合、自然止血がみられ、その後再発することは、あまりありません。

主な原因は?

激しい嘔吐が深く関係していて、激しい嘔吐をするとお腹の圧力が上がり、一時的に食道と胃のつながる部位周辺に対して大きな負担がかかります。これにより胃食道接合部の粘膜が裂けてしまい、その近辺に存在する静脈もしくは動脈が損傷を受けることから出血をきたします。最も強く関連性が考えられているのは、アルコールです。大量のアルコールを摂取すると、激しい嘔吐をきたすことがあります。また、妊娠の際の「つわり」でも発症する場合があります。

症状

主な症状は、突然の吐血です。
その他、激しい咳やむせ込みなどをきっかけとして吐血がみられることがあります。胃食道接合部の粘膜損傷により、お腹の痛みや背中の痛みが同時に現れる場合もあります。

検査法・診断法

上部消化管内視鏡検査を行うことがあります。
検査を行った時には、すでに自然止血している場合もあり、粘膜損傷部位に血液の塊がみられることもあります。
また、胃食道接合部の粘膜損傷は、マロリー・ワイス症候群以外にも、胃食道逆流症、薬剤、感染症などでもみることがあります。これらの鑑別のためにも上部消化管内視鏡検査は有用です。

治療法

胃薬(プロトンポンプ阻害薬など)や制吐剤などの内科的な治療を行います。これらの内科的な治療のみで自然治癒を期待できます。
ただし、出血が多い場合は、血圧がしっかり保てているかどうかを確認し、血圧が低下している場合には、点滴や輸血なども考慮します。また、上部消化管内視鏡検査時に、出血部位に対してクリップやアドレナリン、電気焼却などの方法を用いて止血する場合もあります、

よくいただくご質問

くるめ病院にお寄せいただいた、マロリー・ワイス症候群に関するご質問にお答えしています。
その他のご質問やご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

0942-43-5757に電話する
メールで医療相談する


マロリー・ワイス症候群は、どの世代や年齢が発症しやすいですか?


年代は特に関係ありません。
マロリー・ワイス症候群は、強く嘔吐した際に発症します。


出血を止めるための処置は、どんなものがありますか?


マロリー・ワイス症候群のほとんどの場合、出血は自然に止まりますが、場合によっては内視鏡検査を行い、止血のための以下の措置を講じる必要があります。

○出血している血管を熱で焼灼(出血面を焼くこと)する
○クリップで締めつけて閉じる
○薬を注入する
○血管造影検査で観察しながら、出血している血管にバソプレシンやアドレナリンを注入する

失血量が多い場合は、輸血が必要になります。まれにですが、手術が必要になることもありますので、自己判断せず医療機関を受診してください。


マロリー・ワイス症候群になった場合、絶食をした方がいいですか?


粘膜の裂創が軽い場合は、食事をして問題はありません。
まれに、胸の痛みが伴うような粘膜の裂創が深くなってしまった場合には、絶食が必要になる場合があります。
裂創の状態は、医療機関でしか判断できないため、早めの受診をご検討ください。


マロリー・ワイス症候群の発症原因は何ですか?


激しい嘔吐の反復や咳・くしゃみ、排便、分娩後など、急激に腹腔内圧が上昇する状況であれば、マロリー・ワイス症候群を発症する可能性があります。
また、誘因としては飲酒が最も多く、これはアルコールが胃内容物が食道へ逆流するのを防ぐ筋肉の圧を緩めるてしまうため、容易に胃から食道に圧が加わることによるものです。


マロリー・ワイス症候群の治療には、どんなものがありますか?


出血を確認した場合は、胃薬(プロトンポンプ阻害薬など)や制吐剤などの内科的な治療を行います。これらの内科的な治療のみで自然治癒し、食道への圧の正常化が期待できます。止血が確認できれば、特別な治療は必要とせず、保存的に経過観察を行います。
出血が長期間に続く場合には、内視鏡で止血治療を行います。


マロリー・ワイス症候群の名前の由来は?


1929年にジョージ・ケネス・マロリーとソーマ・ワイスの2人の医師が、飲酒後に嘔吐を繰り返し吐血してしまったクランケ(患者様)を調べた際、胃の噴門部(ふんもんぶ:胃の入り口)に縦走する裂創から出血していたことがわかり、これを報告しました。
それ以来、繰り返して嘔吐・出血し、内視鏡検査で胃に縦走潰瘍を認める場合を「マロリー・ワイス症候群」と呼んでいます。