大腸ポリープと大腸がん

大腸ポリープは普段は症状がなく、検診の便潜血検査で発見することも困難です。
大腸がんの大半は大腸ポリープを放置したために生じます。大腸ポリープの段階であれば、大腸内視鏡検査の際に、同時に切除して治すことができます。大腸がんによる死亡は、医療技術の進歩により、ほとんど予防できる時代になっています。

大腸ポリープ

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発生率は、40歳代から高くなり、年齢が上がるにつれて増える傾向にあります。直腸やS状結腸に発生しやすいと言われていますが、他の部位にも増えてきているようです。大腸ポリープの種類は多く、その中でも腺腫(悪性化しやすい)は全体の約80%を占めています。治療方法は、ポリープの形態や大きさにより、ポリペクトミー(内視鏡を使ってポリープにワイヤーをかけ人体に影響のない電流を流し焼き切る方法)・腹腔鏡下手術・開腹手術などがあります。

大腸ポリポーシス

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大腸粘膜にポリープが多数存在している状態を、「大腸ポリポーシス」といいます。ポリポーシスの中でも「家族性ポリポーシス」は、遺伝性(優性遺伝)であり、高い確率で悪性化するため、近親者に家族性ポリポーシスの人がいる場合には、定期的に検査を受け、早期発見することが大切です。治療方法は、大腸ポリープができる基となる大腸を切除する必要があります。大腸全摘を行っても肛門と小腸をつなぐことで、永久的人工肛門を避けることは可能となります。

大腸がん

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盲腸・上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸・直腸に発生したものを、大腸がんといいます。大腸がんの約70%は、直腸またはS状結腸に発生します。がんが小さく、粘膜内にとどまっている場合には、内視鏡による治療で根治可能な場合もあります。また、がんが粘膜下層にまで広がっている場合であっても、内視鏡的治療が可能な場合もありますが、組織検査の結果によっては外科的腸切除の適応となることもあります。

ポリープの大きさ 5ミリ以下 6~9ミリ 10~19ミリ 20ミリ以上
がんの可能性 0.5% 4% 15% 60%

大腸がんの統計

大腸がんと新たに診断される人は、1年間に10万人あたり103人です。40歳代から増加し始め、50歳代で加速され、高齢になるほど高くなります。罹患数*において、男性では胃がん、肺がんに次いで3番目、女性では乳がんに次いで2番目に多いがんとなっています。

*罹患数:対象とする人口集団から一定の期間に、新たにがんと診断された数
国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」地域がん登録2013年全国推計値,2017年

大腸ポリープ・大腸がんになる原因、なりやすい人

大腸ポリープ・大腸がんの発生は、環境的な原因や遺伝的な原因が大きいとされています。
まず環境的な原因として、日本人の食生活の急激な欧米化です。特に動物性脂肪やタンパク質の摂取量が増加し、植物繊維の摂取量が減少したことが挙げられます。動物性脂肪がいかに大腸がんの発生率を高めているかは、「世界で最も多く肉を食べる世界最大の牧畜国ニュージーランドは、世界で最も大腸がんの多い国」というデータを見てもわかります。

また、大腸がんは遺伝的な原因でも発症します。
大腸がんになりやすい人として、以下のようなものがあります。

  1. 腸ポリープになったことがある
  2. 血縁者の中に大腸がんにかかった人がいる
  3. 長い間、潰瘍性大腸炎にかかっている
  4. 治りにくい痔ろうがある

家系内にがんにかかった人、特に大腸がんにかかった人がいる場合、体質的にも環境的にも大腸がんになりやすい傾向があると言えますので、このような方は早めに検査を受けることをおすすめします。

症状

大腸ポリープができた際に、自覚できる症状はありません。また、早期大腸がんの場合でも、ほとんど症状はありません。
大腸がんが進行すると、潰瘍(粘膜の表層がただれて崩れ落ち、欠損を生じた状態)からの出血、腸管内腔を閉塞することによる便秘・下痢や腸閉塞、大きくなってシコリ(腫瘤)として触れる、痛みを起こすなどの症状を示します。

大腸がんの症状は、がんの発生部位により異なります。

盲腸がん、上行結腸がん、横行結腸がん

  • 大きくなるまで症状が出にくく、腹痛、腫瘤(固いしこり)として見つかります。
  • 慢性的な出血による貧血症状も見られます。

下行結腸がん、S状結腸がん、直腸がん

  • 血便、粘血便などが見られます。
  • 便柱が細くなったり、便秘・下痢が特徴的です。